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九十九屋さんたの妖怪古今録

自証院の土蜘蛛

鬼の顔、虎柄の胴体に長い蜘蛛の足

 自証院は闇に覆われていた。時刻は夜、新月で星明かりだけが差し込んでいる。このような刻限、寺社の中であるというのに、歩いていく女の姿があった。
 女の姿が不意に消えたように思えた。そうではない。大木にその身体は幾重にも重なり、紐にまかれ、引っ張りあげられていた。
 枝の一本を踏んだ時、女の懐から白刃が閃いた。紐は切り裂かれた。それだけでは止まらず、紐の元に向け、刃は向かっていた。
 何かが大木の上から落ちた。女もそれを追い、地面に飛び降りる。
 女ではなかった。小柄で、薄化粧をしているが、それは紛れもない武者だった。名を渡辺綱といい、源頼光の四天王だ。
 綱はたいまつを手に、流れ落ちた血を追い、闇の中に進んでいった。

 土蜘蛛は鬼の顔、虎柄の胴体に長い蜘蛛の足。鬼の顔をした妖怪と言われます。別名、八握脛とも言われます。その大きさは別名から想像される通り、かなり大きいです。深山に住んで、蜘蛛の糸や巣に絡めた旅人たちを食べたと言います。
 前回話した源頼光の部下であり、四天王の一人渡辺綱も、土蜘蛛が退治した話が伝わっています。手傷を負わせたものの、その場で倒しきれる事ができず追った設定になっているのは、土蜘蛛ものの定番のようです。
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